続いて、リフォームの設計方針の話ですが、このリフォームでは廊下を広げることが、その基本になりました。 廊下というと幅は80センチ前後しかなく、車いすでは通るだけでも不十分です。通るだけで90センチ、さらに直角に曲がって、洗面室やトイレに入るとなると、110センチ程の幅が必要になります。廊下脇にあった納戸などを取り壊し廊下を広げました。
洗面所とトイレにも、十分な広さを確保できそうだったので、廊下の幅は110センチとりました。限られた面積の中では、廊下をそこまで広くせずに、廊下に面した戸の幅を広げることによって、曲がりやすくするという方法もありますが、廊下を広げたいと考えた、もうひとつの大切な理由はベッドを動かしたかったからです。
このマンションは面積約100平方メートル。東西に長い間取りで、東側にはLDKとバルコニー、西側には個室があります。ご主人のベッドをどちらに置くのかを悩みました。リビングだと環境はよくても落ち着けない、西側の個室は落ち着くのですが、リビングにいる家族とのつながりが少なくなる心配があったからです。どちらかにするというのではなく、そのときの気分や状況によって、ベッドの場所を変えられるようにと考えた結果でした。その東西をつなぐ、大切な役割を廊下に与えたいと思いました。
落ち着いた空間をつくるためには、開口部だけでなく、壁もまた大切な要素です。洗面室、トイレの反対側の面は何もない一面の壁になっていて、絵を飾れるようにピクチャーレールを取り付け、スポットライトは壁面を照らします。さながらギャラリーのようです。住まいの端から端までを見通すことができ、広がりを感じられ一体感があり、ゆったりできると好評でした。
廊下からリビングや寝室に入る戸は少し工夫しました。広い幅の戸は親子ドアにすることが多いのですが、なるべく引き戸を使いたいため、親ドアを吊り戸形式の84センチ幅の引き戸にし、子ドア部分は開き戸にしました。全開すると108センチになります。
最近では、建具・造作材などは、住宅建材メーカーの既製品が使われることが多くなりましたが、私はこういった商品を使いたくありませんでした。バリアフリーの工事の場合、この親子戸のような特注品が必要になり、既製品では対応しにくいことがまずあります。また、長く使う住宅のなかで、こうした工業製品はどうしても飽きがくるように感じるのです。
といっても、むくの木を使って住宅の内装を造るのは、よほど予算がなくてはできませんので、内装にはシナ合板を活用しました。建具はシナ合板をはり合わせたものです。木は色付けはせずに、半つやのウレタンクリア塗装をして使います。造作材はスプールス材で、これも同じ塗装です。
飽きのこない住まいにするために、住宅はそれ自体が主張するものにはしたくありません。季節の変化を味わったり、長く生活する中で、飾り付けや模様替えなどの変化を楽しめたりすることが大事だと思います。住宅にはそんな「余白」が大切だと思います。