住宅建築の相談では、「間取り」については、建築主から積極的に意見が出ることが多いのですが、高さとなると業者側に任されるのが普通で、古い慣習のままなんとなく決まってしまうことが多いようです。しかしそれでは、使いやすい住まいはできません。水平面の計画である間取りと同じように、垂直方向の「使いやすい高さ」を考えることも大切なことだと思っています。
2005.06.27
「使いやすい高さ」は、3種類に分けられます。ひとつは、「足元の高さ」です。ふたつ目は「座る高さ」、みっつ目はスイッチやコンセントなどの「手元の高さ」です。
足元の高さはこれまでも何度も書いてきましたが、床の段差や、玄関土間からの高さ、階段の高さなど移動に関する部分のことです。段差はなくすことがベストなのですが、リフォームでは難しいものです。
例えば、浴室入り口の段差の解消に私はすのこで対応しています。浴室洗い場の床が、洗面室の床やドアの敷居と同じ高さになるように、鉄心入り樹脂製パイプの骨組みを置き、その上に樹脂製のすのこを敷きます。
そうすれば、洗い場まで車いすやキャスターの付いたシャワーいすで入ることができます。
しかし、すのこを使わない方がよい場合も少なくありません。浴槽の縁の高さが30センチしかなく、そこに15センチのすのこを入れなくてはいけない場合などです。
この場合、縁の高さとしては15センチしか残らず、浴槽の底とすのこの上面との差が大きくなって、入るのに危なくなるからです。また、水栓の位置も低くなり、使いにくくなります。
「使いやすい高さ」は、ひとつに決まったものではなく、それぞれ使う人や、住宅の条件によっても異なるものです。設計者や建築業者と正確に打ち合わせ、実際に現場で確認することが大切です。