台所(1)- 高齢者向けには使い勝手優先 - 第15回

台所(1)- 高齢者向けには使い勝手優先 - 第15回 使いやすさを第一に考えたシンプルな台所

70代の夫婦2人が暮らす築約30年の家を改修しました。2人ともとくに体に不自由はなく、改修の重点は使いやすい台所づくりになりました。


2005.01.25

もともとは台所と食堂、居間は壁で隔てられていたのですが、改修では壁を撤去し、開放的な空間としました。

流し台は長さ2.7メートルのまっすぐな形とし、約0.9メートル離して、大きな両面ガラス戸棚のついたテーブルを壁と床に固定しました。

戸棚の流し台側には普段使う食器やコーヒーカップのほか、炊飯器や電子レンジ、トースターなどを収納しています。

反対側もガラス戸棚になっていて、主として薬など夫の細々とした物を入れるようにしました。夫はすでに仕事からは引退していますが、奥さんは書家で日々忙しくしています。

台所に立つ時間は少しでも減らしたいという要望から、考えた末に生まれたのがこのシンプルなスタイルでした。

流し台で料理を作ったあと、振り向けばそこにテーブルがあります。食後もいすに座ったまま振り向けば、汚れた皿を流し台のシンクに入れられます。

奥さんは最初「居間から台所が見えすぎる。それになんだか横着ものみたい」と心配していましたが、「お盆で料理や皿をテーブルまで運ぶ手間がなくなったのがうれしい」と、使い始めてすぐに喜んでくれました。

テーブルの位置にカウンターを置けばしゃれた感じにもなりますし、散らかった流し台の目隠しにもなります。そういう設計の家も多いようです。

しかし、ほとんど夫婦2人だけの生活、そして食事であることを考えると、格好よりも使い勝手を優先して考えたのです。

子供や孫たちが来たときは、このテーブルは作業机に変身し、調理の手伝いをしてもらう場所になっています。料理は孫たちに居間のテーブルに運んでもらい、そこでそろって食べているそうです。

大瀧雅寛 = 2001年01月25日 朝日新聞(東京本社版)夕刊マリオンから