70代の夫婦宅の台所改装の続きです。台所の収納についても、奥さんと共にいろいろと考えました。「いらない」と決まったのが、流し台の上のつり戸棚です。身長154センチの奥さんでは、流し台の上の棚は料理をしながら使おうとしても背が届かないし、踏み台を使って出し入れするのもおっくうでなんだか怖いと聞きました。
2005.02.01
私はそれに加えて、せっかく窓がある空間の広がりを大切にしたかったので、つり戸棚はつけないことにしたのです。
その代わりに用意したのが、ひとつはテーブルわきのガラス戸棚ですし、もう一つが台所わきの作りつけの大きな食器棚でした。間口1.6メートル奥行き0.6メートルで、高さは天井まであります。
大きく3段に分かれていて、すべて引き戸で中は細かく棚を入れてあります。戸を開ければ食器類が一覧できます。その食器棚の周りには高さ70センチのところに、15センチの幅で手をつくスペースを設けました。
これが実は手すり代わりになるのです。
食器棚と流し台の間には、立ったままでアイロンが掛けられるカウンターを作りました。
また、テーブルには電磁調理器を埋め込みました。なべ料理はもちろん、ちょっとお湯を沸かすときにも使ってもらっています。
電磁調理器は火の心配もなく、夫はこのテーブルで新聞を大きく広げて読んでいます。
もう一つ、工夫とは呼べないような工夫があります。奥さんが従来、慣れ親しんできたことを変えなかったことです。
流し台の高さや、流しやコンロの位置関係です。台所設計の「教科書」にはいろいろな理想が書かれていますが、高齢者が相手の場合はとくに、慣れ親しんできたことは変えないというのが原則だと私は思います。
そうしないと、どんなに立派な台所を作っても、「どうも使いづらい」といわれてしまうのです。
この台所、できあがって5年近くたちますが、ずっと喜んで使い続けてもらっています。