現代の住宅では、寝る部屋と生活する部屋は分けることが基本です。そうしないと、「生活の幅が狭くなる」と住宅づくりの「教科書」には書いてあります。そんな常識をあえて破り、寝室兼居間を作ったことがあります。
2005.03.01
改造したのは60代の夫婦と息子の3人が住む一戸建て住宅です。奥さんが脳こうそくによる左半身まひのため、車いすを使う生活になりました。一階を改造して奥さんのベッドを置くことになりました。
一階は台所がほぼまん中にあり、西側に食事をする六畳の茶の間、東南側に八畳のリビングがあるという間取りでした。
このリビングを改造し、寝室兼居間にしました。東南側の家一番の暖かな部屋を、奥さんのために使いたいという夫からの要望に答えたものでもありました。
リビングの南側に四畳分を増築するとともに、台所の位置を変え、元台所があった場所には車いすで使いやすい二畳分のトイレを新設しました。
そうした上で、部屋の東側ほぼ中央に、窓側に頭がくるようにベッドを置きました。南側にも大きな出窓を設置したので、ベッドからでも空や外の景色、庭の花壇が見えます。
奥さんの友達が来た時のために、南側の出窓に接したところにソファと小さなテーブルを置きました。友達にはソファに座ってもらい、奥さんはベットにいたままで、会話ができます。
部屋の北西の隅には、流し台を置きました。流し台の位置からもベッドやソファの奥さんと話すことができます。夫は夜、介護のためにベッドの横にふとんを敷いて寝ています。ちょっと、大変そうではありますが、昼間車いすで動きやすくするためには、動かすことのできるふとんが便利なのです。
ベッドを家のどこに置くのかということは、玄関を家のどこに作るのかと同じぐらいに、とても大切なことだと私は考えています。