2014年6月18日 - Hさんと私の大切な約束

このひとに出会わなかったら、自分の運命がきっと変わっていただろうと思うひとが何人かいます。この住まいてさんも、そういうひとでした。Hさんは私にとって大切な住まい手さんであり、手厳しいバリアフリー住宅のご意見番でもありました。親族の方から、朝電話がかかってきたのは、2年前の2014年6月18日でした。

2014年6月18日 - Hさんと私の大切な約束

私が当時、朝日新聞に連載していたコラムが目にとまり、以前から計画していたリフォームをお願いしたいと連絡をいただきました。2002年に竣工したこの住まいは、明るくゆったりと読書ができる書斎をつくることが、一番のコンセプトでした。

2014年6月18日

Hさんのお住まいは、当時の建築家が設計をした大屋根が美しい木造2階建てです。この書斎は応接間の縁側のような位置に増築し、その脇に浴室と洗面室も増築しました。庭に出やすいように勝手口もつくりました。

2014年6月18日

高齢になると友人や来客を招く機会は少なくなるので、応接間は寝室にすることになりました。それには、もうひとつの理由がありました。

このお住まいにはすでに寝室があり、その部屋でお母様の介護をしていたそうです。そのことをあまり思い出したくないので、今回のリフォームで応接間を寝室にすることになったのです。

2014年6月18日

プランが確定したときに、こんなエピソードがありました。事務所のスタッフが、Hさんにこう尋ねたそうです。「大瀧は、東南の角の一番いい場所に、浴室と洗面室を配置したのですが、本当にいいのですか?」

「入浴も洗面も朝日のさし込む中の方が、気持ちがいいもの。あなたも私くらいの年齢になるとわかるわ」と、Hさんが答えたそうです。

木製浴槽を設置した、シャワー浴できる浴室

この浴室は当初、「浴槽をまたぐには腰に負担がかかるから」ということで、浴槽を設置せずシャワ...「木製浴槽を設置した、シャワー浴できる浴室

リフォームから10年ほど後、Hさんはこのお住まいと近所の高齢者マンションとを、行き来するライフスタイルになりました。高齢者マンションというよりホテルのようでした。

2014年6月18日

高齢者マンションの3階、庭の眺めがとてもいい部屋です。特に用がなくても、お茶に呼ばれるようになりました。私は甥っ子のようでした。

2014年6月18日

高齢者マンションの浴室をリフォームしました。これは原則禁止なことですが、高齢者マンション管理者のご厚意により実現したものです。

シャワー浴ができ湯船にも - 高齢者マンションの浴室リフォーム

長年暮らしていた住まいから、高齢者マンションに生活の拠点を変えることになりました。既存の浴...「シャワー浴ができ湯船にも - 高齢者マンションの浴室リフォーム

Hさんのところに訪問すると必ず訊かれることは、「今はどこでどんな家を造っているのか?」ということでした。私が近況報告すると、「これからの時代はさらにバリアフリー住宅が必要にになるから」と、よく言われました。「もっと若ければ、あなたの建てた住まいで暮らしてみたかった」とも。

2014年6月18日

Hさんから教えていただいた「バリアフリーの大切さ」と「居心地の大切さ」。この先、私が造る住まいで、どれだけそれを追求できるかが、Hさんと私の大切な約束なのです。私は81才まで、この仕事を続けていくつもりです。

2014年6月18日