バリアフリーらしくないバリアフリーキッチン〈2017-14〉

「バリアフリーらしくない、バリアフリーキッチンにして欲しい」とのご依頼でした。車いすユーザーの家族さんがいらっしゃるお住まいです。リビングから丸見えになってしまうレイアウトなので、綺麗なキッチンにもして欲しいとのことでした。

バリアフリーらしくないバリアフリーキッチン このお住まいは2002年に竣工、築15年になります。今回、メンテナンス工事でお伺いすることになりました(2017.06.14)

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車いすユーザーの家族さんと、高齢のお母さまのためのキッチンですが、当面は車いすで使うよりも、立って使うことが多いとのことでした。ダイニングを背にした「エル字型」のレイアウトで、その長辺がキッチンになっています。

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キッチンの天板は人工大理石、高さは80cmにしました。シンクの深さは15cmと浅くしたかったので、既製品がなく特注製作しました。スライドできる水切りプレートは、人工大理石カウンターとフラットになるように、シンクに小さな段を付いています。

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車いすでシンクを使うためには、シンクの下部が開口する必要があります。そのために、シンクの下は2台のワゴンになっていて、車いすで使うときはワゴンを外に出します。ワゴンはゴミ箱になっています。

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キッチン天板面の80cmという高さは、まな板を使うには高すぎます。シンクとコンロの間にある、引き出しの最上段に、既製品のまな板を埋め込みました。まな板を利用する時だけ、するすると引き出します。

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キッチンと対面にある配膳カウンターとの距離は、110cmにしました。車いすで回転できる最小限の寸法です。エル字型レイアウトの短辺は、食器棚になっています。吊り戸棚の高さは、車いすでも使えるように、できるだけ低くしました。

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オーダーキッチンの背面側には、ダイニングと間仕切る食器棚と、配膳カウンターになっています。この引き戸を出ると、すぐに玄関に出られます。調理中でもすぐに来客の対応ができます。

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このカウンターの下部も、車いすで入ることができるように、開口にしています。開口の左右には、ポット、炊飯器、米びつなども収納できるようにしました。

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配膳カウンターも、キッチンと同様に人工大理石にし、高さも同じ80cmにしました。配膳カウンターには、引き出しや収納があるので、配膳カウンターにものを置かないで済みます。

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リビングのソファーの位置からは、ダイニング越しにキッチンがよく見えます。キッチンの壁はタイル貼りにしたので、リビングから見ても表情が豊かになりました。カウンターと食器棚の間は、ゆったりとスペースが確保しました。ご両親の寝室にも繋がっているので、寝室に目が届きやすくなっています。

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このお住まいが竣工したから、あっという間に15年が経ちました。その年月を感じさせないほどに、大切に暮らしていただいていることが見て取れました。

確かにステンレス製キッチンに比べれば、木製のバリアフリーキッチンは、耐久性が劣るかもしれません。

しかしこのお住まいのように、バリアフリーキッチンを、バリアフリー住宅を、愛情かけて暮らしていただけるのなら、いつまでも美しい状態を保つことができるのですね。