住まいてさんと一緒に設計した、試行錯誤のバリアフリー住宅〈2016-1202〉

バリアフリー住宅の第1作目の住まいをご紹介します。バリアフリーに関する書籍や情報がない、1993年から1995年にかけて、車いすユーザーの住まいてさんと一緒に、ゼロから「バリアフリー住宅」を設計施工したお住まいです。

住まいてさんと一緒に設計した、試行錯誤のバリアフリー住宅 調理している人が住まいの主役になるように、住まいの中心にキッチンを造りました(2000)

住まいてさんと一緒に設計した、試行錯誤のバリアフリー住宅

道路から奥まった狭い敷地でしたが、逆にそのことが迷いのないプランを導きました。床面積を最大限に活用するため、玄関室を直接LDKにつなげ、廊下を省きました。

住まいてさんと一緒に設計した、試行錯誤のバリアフリー住宅

玄関には、ベンチを兼ねた玄関収納があります。このベンチに腰をかけて、ご主人が靴の脱ぎ着をします。また、来客が腰をかけるのにも活用されています。折り畳んだ車いすを、1台置くことができるスペースも確保しました。

住まいてさんと一緒に設計した、試行錯誤のバリアフリー住宅

動線は、玄関からLDKに入ります。LDKの中に、トイレ・浴室・洗面室があります。玄関ドア以外は全て引き戸にし、車いすでの目の高さにガラスを嵌めました。

住まいてさんと一緒に設計した、試行錯誤のバリアフリー住宅

トイレは横から入ります。車椅子で回転できる、最小限の大きさにしました。便器下部の床をかさ上げして、車いすの高さに合わせてあります。

住まいてさんと一緒に設計した、試行錯誤のバリアフリー住宅

浴室は洗面室を兼ねた3帖ほどの大きさです。当時、開口幅の広い、浴室用の3枚引き戸はありませんでした。この3枚引き戸は、店舗用土間引き戸を流用しました。

住まいてさんと一緒に設計した、試行錯誤のバリアフリー住宅

洗面台の下部はオープンにして、膝がぶつからないようにしました。浴槽と入浴台の高さは、車いすの座面の高さに合わせました。

住まいてさんと一緒に設計した、試行錯誤のバリアフリー住宅

南側には建物が隣接しており、リビングを明るくするために、トップライトから採光しました。リビングをゆったりと感じさせるために、大きな窓を取り付けました。リビングの中から外の様子がよく見えます。また、道路を歩く、ご近所さんたちからもリビングの様子が見えるそうです。そんなときは、お互いに手を振るそうです。

住まいてさんと一緒に設計した、試行錯誤のバリアフリー住宅

退院する前は、家族から面倒みてもらうようになると思っていたそうです。しかし、今までと同じように近所の商店街に買い物に出かけ、今までと同じように、家族の料理をつくることができる。退院後も、自分が今までと同じように家族の役に立てることが、とても嬉しかったそうです。

そんな話を聞いて、私もとても嬉しかったです。しかし、それと同時に「バリアフリー住宅」の役割の大きさについて、身が引き締めるのを感じました。

バリアフリー住宅という言葉が一般的になる前、1995年の1月に竣工しました。阪神淡路大震災もこの1月で、私は29歳の冬でした。このお住まいが、その後の私の進むべき方向を、変えることになったのです。