家でしかできないことって何だろう〈101〉

まずは、タイトルについて説明します。32年前の 1987年のことです。 ある住宅作家の講演を聴講するために、新潟県民会館に出向きました。 住宅作家は壇上から、私たちにこんな質問を投げかけたのでした。

『みなさん、家でしかできないことって何だと思います?』

4ヶ月前に設計事務所を開設したばかりの、21才の私は考えました。 寝るためならホテルがあるし、食べるためならレストランがある。 楽しいことは外にたくさんあるし、物をしまうのなら倉庫がある... 。 ひとつひとつ考えていくと、家でしかできないことってあるのかな... 。

家でしかできないことって何だろう


『それはですね!』

『家族が、デレデレすることですよ!』

大ホールの客席の私たちは、「なんだ」と笑いだします。

『みなさん笑いますけど、だって、道路の脇で、どこかの家族が、』

『デレデレってしてたら、気持ち悪いでしょ!』

大ホールの客席が、さらに大きくわきました。

ですが、私は真剣でした。自宅でのお茶の間の光景を、

幼い頃まで遡(さかのぼ)って、思い返していたからです。


「家でしかできないことって何だろう」を、言い換えるのなら、

「ほんとうの住まいの役割とは何だろう」ということ。この問いと、

常に向かい合いながら、私は仕事を続けていくこととなりました。


この講演会から、24年後の2011年に、時間を進めてみましょうか。

私は家庭を持ち、幼稚園に通う娘と家内の3人で暮らしていました。

2011年3月16日。この日は、18時20分からの計画停電となりました。

まるで我が家だけ取り残された様な、ろうそくを灯しての夕食です。

このろうそくの灯の中、私は24年前の講演会を思い起こしながら、

『暖かく包み込んでくれる優しさ』という住まいの役割を思いました。

家でしかできないことって何だろう

それと同時に、私はあらゆる建築の中で、とりわけ住まいが美しいと、

感じていた理由もわかりました。

住まいが美しいのは、家という空間は家族が暮らして、

それぞれの家族の生活が、深く根付いているからなのだ。

楽しいことばかりではなく、辛いことがあったとしても、

そのことを受け止めてくれて、暖かく包み込んでくれる優しさが、

住まいを美しく見せているのだと、思ったのでした。


家でしかできないことって何だろう

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