『トイレを、居室としてしつらえなさい』〈109〉

私が自信を持っていた間取り図を、ある建築家に見てもらったことがありました。しばらくすると建築家から一言、『トイレを、居室としてしつらえなさい』。玄関や居間などに比べ、トイレはデザインの必要がない空間なのだと考えていたことを、読み取られてしまったのです。

『トイレを、居室としてしつらえなさい』


このお住まいのトイレは、寝室と洗面室の近くにつくりました。

右奥の洗面台の脇には、ユニットバスをつくりました。

『トイレを居室としてしつらえなさい』

コンパクトにまとめた水回りですが、拡がりを得たいと考えました。

内装は「白・グレー・木目」の3色にまとめ、住まい全体を統一し、

廊下や廊下と繋がる寝室と、一体として感じられるようにしました。

『トイレを居室としてしつらえなさい』

このトイレには2方向から入れます。開けっ放しにできるトイレです。

寝室に面する手前の引き戸は、2枚連動にして開口幅を広くし、

脇の壁を造り付けの本棚にし、入る前に1冊手にとることができます。

『トイレを居室としてしつらえなさい』

一般的なトイレはドアの正面が、便器になる配置が多いのですが、

この様に便器が横を向いている方が、便器に腰をかける時に、

体を90度回転させるだけで済むので、使いやすいトイレになります。

『横向きトイレ』と名付けています。

『トイレを居室としてしつらえなさい』

最近の便器の座面の高さは、420mm程が多くなりましたが、

便器に腰をかけた時に、膝が90度曲がる高さです。

ですが、膝が90度曲がってしまうと、便器から立ち上がる時には、

膝に負担がかかってしまい、立ち上がりにくくなってしまいます。

そこで便器の下に、便器の輪郭に合わせた樹脂製の台を入れました。

厚さは25mm、便器に座ったときに、かかとが少し浮く位の高さです。


『トイレを、居室としてしつらえなさい』という教えに、

私は、できるだけ近づこうとしてきました。

建築家からそう教わったのは、25年ほど前のことです。

それ以降、トイレを大切に考えるようにしています。

バリアフリーの観点でも、トイレに最後まで自分で行けることが、

とても、重要なことなのだと考えています。

「よい建物と悪い建物の見分け方」の話をしていいですか。

道路から見た外観や、玄関、リビングなど、ひとの目に付く部分を、

ていねいにデザインするのは当然のことです。

その建物が「よい建物」か見極めたかったら、廊下やトイレ、

階段に行き、その空間や細部を観察してみてください。

というも、廊下やトイレ、階段などの細部まで、

ていねいにデザインされている建物は、間違いなく、

建物全体も、ていねいにデザインされているからです。

このトイレの教えだけでなく、たくさんの方々から教わったことが、

私の設計の基礎となっているようです。