洗面室の中にあるトイレが担う、隠れた大切な役割〈110〉

このお住まいは3層(地階・1階・2階)になっていて、それぞれの階にトイレがあります。このトイレは、1階の洗面室の中にあるトイレです。左右の引き戸は、リビングや寝室につながる、落ち着かないトイレなのですが、実はこのトイレには、そのマイナス点を補う、大きなプラス点があるのです。

洗面室の中にあるトイレが担う、隠れた大切な役割


たかがトイレ、されどトイレ。このお住まいのトイレについて、

住まいてさんとどのように考え、解決したのか、ご紹介します。

洗面室の中にあるトイレが担う、隠れた大切な役割

地階には、『便器の正面から、そのまままたがる』トイレがあります。

車いすユーザーの住まいてさんの、便器へ安全に乗り移ることができ、

トイレでの動作にぴったりと合わせた、バリアフリーなトイレです。

洗面室の中にあるトイレが担う、隠れた大切な役割

メリットしかないようなこのトイレ、「隠れたデメリット」があり、

それはこの様なトイレは、まず外出先にはないということです。

洗面室の中にあるトイレが担う、隠れた大切な役割

公共施設などの「ユニバーサルトイレ」は、この様なものです。

正面からまたがるトイレに慣れてしまうと、ユニバーサルトイレが、

使えなくなってしまうのではないか、と考え込んでしまいました。

つまり、泊りがけの旅行には、出かけられなくなるのです。

洗面室の中にあるトイレが担う、隠れた大切な役割

住まいてさんと何回も検討した結果、この洗面室の中に造るトイレは、

「ユニバーサルトイレ」のレイアウト同様にすることになりました。

普段は、快適な地階の「バリアフリーなトイレ」を使い、

体調のいい時や家族がいる時は、このトイレを使うようにする。

『両方の形式のトイレに慣れてもらう』、ということになったのです。

洗面室の中にあるトイレが担う、隠れた大切な役割

もし住まいてさんが、20代や30代と若い方だったのなら、

この様な選択には、ならなかったのかもしれません。

ですが、この住まいてさんのように、50代以降の方なのなら、

『トイレのためだけに、体力や腕力を使い切らない』という、

現実的な選択が、正しい様に思えたのでした。

洗面室の中にあるトイレが担う、隠れた大切な役割

設計者の中には、「バリアフリー住宅では、かえって体が弱くなる」

という自論を、お持ちの方がいらっしゃいます。

寝室を和室にして、布団での就寝を勧めたり、寝室を2階につくり、

階段での昇降はリハビリである、と言うのです。

しかし私は、それとは反対の立場をとります。つまり、

洗面室の中にあるトイレが担う、隠れた大切な役割

住まいは住まうひとに対して、無条件にやさしくあるべきだと、

考えているのです。日々の暮らしが、楽しいことばかりではない様に、

「体調や気持ち」も、いい時もあれば、悪い時もあるでしょう。

そんな「今ひとつ」な時に、

『住まうひとを、いかに優しく包み込めるか』が、

住まいのもっとも大切な価値なのではと、考えているのです。

洗面室の中にあるトイレが担う、隠れた大切な役割

日々の暮らしの全てに対して、全力で向かい合っていくのではなく、

自分や家族の限られた時間、体力に、うまく合わせながら、

日々暮らしていくことが、大切なことの様ですね。