ベッドを置く場所を、選択できる自由があること
〈118〉
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住まいてさんが進行性の難病により、近い将来に車いすを使うこと、ベッドに横になっている時間が多くなることが、想定されました。東西に広いマンションなのですが、そのベッドをどこに置くのか悩みました。「東側のリビング」がいいのか、それとも「西側の寝室」がいいのか。
2019.01.08
東側のリビングは、環境はいいのですが、ベッドでは落ち着けない、
ベッドのあるリビングには、来客を招きにくくなることでしょう。
一方、西側の寝室は、落ち着くのですが、日中の環境がよくない、
リビングにいる家族とのつながりが、少なくなる心配もありました。
『廊下を広げること』が、この問題を解決するのではと考えました。
一般的な廊下の幅は80cm前後で、車いすで行き来するにはやや狭く、
できることなら90cm、また、110cm程の幅があれば直角に曲がって、
洗面室やトイレに入りやすくなるので、この廊下は110cmにしました。
ですが、限られた面積の中では、廊下の幅ををそこまで広くせずに、
「廊下に面した戸の幅を広げることによって、曲がりやすくする」
という方法もありました。廊下を広げたいと考えた大切な理由は、
リビングと寝室の間を、「ベッドを移動させたかった」からです。
どちらかにするというのではなく、そのときの気分や状況によって、
ベッドの場所を変えられる様にと、住まいてさんと考えた結果でした。
幅の広い廊下の両端を幅の広い引き戸にすると、見通しも良くなり、
住まいの東西をつなぐ大切な役割を、廊下に与えることができました。
できれば「廊下の無い間取り」がいいと、本当は考えているのですが、
廊下をなくせないならば、それを逆手に取れないのかと考えたのです。
結果、この廊下によって住まいの端から端までを見通すことができ、
広がりが感じられ一体感のある、ゆったりできる住まいになりました。
ところで「バリアフリー」とは、
『障がい者のための配慮、障がいとなるものを無くしていくこと』
だけを指す言葉なのでしょうか。
単に、車いすユーザーの、ご主人にとって使いやすいだけなら、
ご主人は家族さんに対して、申し訳なく思うではないでしょうか。
なので「家族全員にとって使いやすいこと」を大切に考えました。
それが広い廊下や、使いやすい水回りなどの工夫へとつながりました。
大きな発明をするというより、身の回りの小さな工夫、アイディアを、
ひとつひとつ発見していく姿勢を、常に持っていたいと考えています。
「バリアフリー」というよりも、『フリーマインド』という言葉が、
私の気持ちにより近く感じます。「とらわれない心」という意味です。
設計に行き詰まった時は、現場を訪ね、そこの空気を吸ってきなさい
ある建築家をアトリエを訪ねた時、そう教わったことがありました。
住まいに限らず創作するとは、何よりも「感じること」から始まる、
感じたことを自分の中で昇華させれば、自ずと形が浮かび上がると。
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