『ゆっくりでいいよ』の一言を添えること〈121〉

以前に建てたお住まいを訪問しました。住まいてのMさんは車いすユーザーで、メンテナンスは直ぐに終わると、帰りがけMさんから、中学生の子どもさんの作文が、市内の中学生人権作文市長賞を、もらったことを聞き、私まで嬉しくなりました。見せて頂いた作文に私は感動しました。その内容は、車いすユーザーとなった、お父さんについてでした。

『ゆっくりでいいよ』の一言を添えること


久しぶりに住まいてさんのお宅にお伺いして、よく感じることがあります。

住まいてさんご夫婦は、そんなに変わっていないのに、

対して、子どもさんたちが「激変」していることです。

そして、その成長は、「身体的なことだけではない」ということが、

中学生の子どもさんの作文には、書き連ねられていたのでした。

その作文には、こうありました。

『ゆっくりでいいよ』の一言を添えること

楽しみにしていた夏休みの家族旅行、朝に出発の予定が遅れてしまい、

昼前となってしまったそうです。お父さんの支度が遅れてしまったのです。

お父さんは前日、入念な準備を済ましていたのですが、出発当日に、

アクシデントが発生してしまいました。トイレのことで、でした。

家族全員、待ちに待った旅行です。普通ならここで、「イライラ」して、

お父さんをせめてしまいそうですが、このMさんのお宅では、違いました。

その人にとって、触れられたくない事に触れずに、

最良の手助けをしてあげられる方法。

僕の考えはこうである。

それは「待つこと」だ。

最初に述べた父のアクシデントについても、

その事には触れずにただ待っているだけた。

『ゆっくりでいいよ』中学生のMくんの作文より

そして、Mくんは提案するのです。

いきなり人の内面に踏み込まずに、

手助けするきっかけとして、まずは、

「何かお手伝いすることをありますか?」という声かけの後に、

「ゆっくりでいいよ」と付け加えてあげたい。

『ゆっくりでいいよ』中学生のMくんの作文より

『ゆっくりでいいよ』の一言を添えること

私が30年以上の時間を掛けて、たくさんの住まいさんから学んだこと、

Mくんにとっては、日常の一場面であり、あたり前のことなのでした。


同じ様な話を、住まいてさんというよりは、私の師匠ともいうべき、

Oさんからも、聞いたことがありました。友人が多いOさんは、

何でも手を出してくれる、友人に対して、こう言うそうです。

大丈夫、手伝わなくてもいいから。

手伝ってほしい時は、こちらからお願いするから。

待ってくれるだけでも、最良の親切なのよ。

 

お手伝いをする、お手伝いをされるの関係では、お互いの『目線』が、

同じ高さにはならないのに対し、「待ってもらう」だけなのなら、

お互いの『目線』を同じ高さに感じることができ、自分の気持ちに、

寄り添ってもらっていると感じられると、私にお話しくださいました。

『ゆっくりでいいよ』の一言を添えること

また、こんな思い出話もしてくれました。

Oさんが退院して住まいへと戻り、まだ間もない頃のこと、

同居している子どもさん夫婦から、こう言われたそうです。

お母さん、卑屈にならないでね。

お母さんは、よそのお母さんが教えられないことを、

お母さんは身を持って、私や子どもたちに教えてくれているだから。

 

なるほど、どんな時でも、お父さんやお母さんは、教師なのですね。

どんな時でも。