介護保険5 - ドア→引き戸 難しい改修 - 第05回

介護保険5 - ドア→引き戸 難しい改修 - 第05回 引き戸だと車いすでも出入りしやすい

介護保険関係の改修工事の対象に含まれてはいますが、実際には実現することが難しいのがドアから引き戸への改修です。


2004.11.02

ドアと比べて、引き戸にはさまざまな利点があります。まず、同じ条件なら開口部を広く取れます。わが国で多いのが、柱と柱の間が約90センチの住宅です。そこに出入り口を設ける場合、ドアならば開口部は70センチ程度ですが、引き戸にすれば約80センチになります。車いすの出入りには、だいたい80センチの幅は必要ですから、この10センチの差は大きい意味を持ちます。

また、簡単に開けっ放しにできるのも便利です。さらに、開閉の際に、体を移動させる必要がないことがメリットです。車いすでドアを開けることを考えてみてください。引くにしろ、押すにしろ、車いすを動かしながらの難しい作業となります。それが、引き戸なら比較的容易です。

最近の住宅にドアが多いのは、各部屋のプライバシーを保ちやすいことや、ドアの方が高級感があることが原因なのでしょう。加えて、工務店側の事情を書けば、同じ場所にドアと引き戸を作るのでは、引き戸の方が工事の手間がかかるので、工賃が2、3割高くなります。特別な注文がない限りドアにする、ということもあるのでしょう。

新築でも手間がかかるのですから、改修は予想以上の工事となります。周囲の壁を壊さねばなりませんから、最低で10万円以上かかります。また、引き戸の弱点として、戸を引き込む壁が必要です。その壁さえあれば、最近の雨戸によく見られる形式ですが、壁の外側につるすような形でも納めることができます。

ドアにしかできない場合は、取っ手のわきに縦手すりを、できれば壁の両面にあれば、ドアの開閉の動作が不安定になりません。引き戸かドアか、という問題は、何よりも新築の時から考えておいて欲しい問題です。

大瀧雅寛 = 2000年11月2日 朝日新聞(東京本社版)夕刊マリオンから