兼用住宅(3)- 依頼主の「夢」と「思い出」両立 - 第36回

兼用住宅(3)- 依頼主の「夢」と「思い出」両立 - 第36回 ロフトに絵を並べた

前回に続く兼用住宅の2階の話です。2階には美容室に関連した部分はありませんが、アトリエがあるので、一般の住宅とは少し趣が違いました。アトリエは約30平方メートルあり、依頼主の夫の画家のものでした。夫は3年前の夏、チェコの街角でスケッチをしているときに倒れ、亡くなりました。


2005.06.20

依頼主の「夢」と「思い出」両立

夫は数千枚の水彩画を残しましたが、

友人たちにその絵を見てもらえるような、

ギャラリーを作りたいというのが、依頼主の夢でした。

かといって、アトリエはさわりたくありません。

夫の生前のままの状態で残したかったのです。

依頼主の「夢」と「思い出」両立

その思いを大事にしたかったので、

ギャラリーは2階の屋根裏に作りました。

幅1.8メートル、長さ7.4メートルの細長いロフトを作り、

その壁に絵を飾ることにしたのです。

依頼主の「夢」と「思い出」両立

壁の上部には絵を掛けるためのレールを取り付け、

天井には等間隔に照明を埋め込みました。

壁と天井にはどちらもシナ合板を張りました。

このような狭い空間は、壁と天井を同じ材料にした方が落ち着くようです。

依頼主の「夢」と「思い出」両立

2階のアトリエ以外の場所には9畳分と5畳分の洋室と

2畳分の書斎を作りました。

そしてこの3室用に2畳分のウオークインクローゼットと、

計約3畳分の洋服入れ、物入れを用意しました。

ベッドのほかには、一切家具を置かないようにするためです。

そうしておけば、随時、展覧会を開いたり、

友人たちに集まってもらったりすることも可能です。

依頼主には2人の子供がいます。

将来、この家を2世帯住宅として使うことも考えられます。

その場合は、依頼主本人は1階だけで暮らせるようにしてありますので、

2階に別に玄関を設ければ、2階が子供の住宅になります。

今回は手を付けなかったアトリエは、

その際に、リビングダイニングキッチンにすればいいと考えています。

大瀧雅寛 = 2001年06月20日 朝日新聞(東京本社版)夕刊マリオンから