94歳のおばあちゃんと60代の夫婦が住む家を改装したことがあります。おばあちゃんはとくに病気はなかったのですが、高齢のためほとんどベッドで生活していました。
2005.03.08
なるべく暖かく気持ちのよい部屋を使ってもらいたいという家族の考えから、以前は客間として使っていた南向きの六畳間が、おばあちゃんの寝室(居室)になっていました。
私もそれには賛成でした。たまに来るお客さんより、住んでいる人を大事にしたいと思うからです。
ただし、もともとが客間であったため、トイレからも、家族がふだんいるリビング・ダイニング・キッチン(LDK)からも遠いのが難点でした。
改装は増築も含めた大がかりなものでしたので、おばあちゃんの寝室はそのままに、トイレとLDKを動かしました。
トイレは廊下のすぐ反対側に設けました。部屋の引き戸を開ければすぐにトイレです。
高齢者の場合、寝室からトイレまでなるべく近く、できれば2メートル以内に欲しいところです。
LDKは寝室のすぐ隣に移しました。しきりは引き戸ですから、広く開けることができます。
流し台で仕事をしていても、食卓で食事をしていても、家族はおばあちゃんのいるベッドを見通すことができ、その様子が分かります。
おばあちゃんからも家族に声をかけやすい距離になりました。おばあちゃんの食事を運ぶのにも便利です。
単に床を平らにするとか、手すりを設けるとかというハードな面だけをいくら直しても、それでバリアフリーの家になるとは私は思いません。
この家でいえば、おばあちゃんをさびしくさせない工夫、すなわち家族同士の心をつなぐ改修が大事だと思います。
流しやトイレだけではなく、浴室など他の水回りも、なるべく寝室の近くにあると、介助者にとって便利であることを付け加えておきます。