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大瀧雅寛 ↘

台所(4)- 車いすにはコの字形が便利

〈018〉

交通事故で下半身が不自由になり、車いすを使っている奥さんの依頼で、新しく台所を作ったことがあります。「料理が大好き」という人でしたので、腕を十分にふるってもらえるようにと考えました。

台所(4)- 車いすにはコの字形が便利

車いすのまま、料理を楽しめるようにと考えた台所 - 第18回 - 2001年02月15日 朝日新聞(東京本社版)夕刊マリオンから

2001.02.15

まず、流し台の形です。流し台は一般的には、コンロと調理台、流し(シンク)が一列に並んだ「I型」と、L字形に並んだ「L型」に大別されます。

I型は横の直線移動が多いので車いすでは使いにくく、L型をさらに進めたコの字形にしました。

コの字形だと回転運動が中心になるので車いすでも使いやすいのです。車いすが動ける直径1.8メートルのスペースを確保し、調理の手順に合わせて、冷蔵庫、流し、調理台、コンロ、配ぜん台の順で並べました。

全体の面積は四畳半ほどになりました。流し台は下部を空間にしたカウンター式で、車いすで奥まで入れるようにしました。流し台などのへりには手すりを取り付けたので、調理中に物をもったままでも、片手で動けます。

流しは間口を1.1メートルと広くし、その代わりに深さを14センチと浅くしました。一般的な流しの深さは20センチから22、3センチです。

水がはねないぎりぎりの深さが14センチでした。排水口は右側に寄せています。

台の高さは80センチと低くしましたが、包丁を使う時にはそれでもちょっと高すぎるので、高さ65センチの「まな板用ワゴン」を用意しました。

このワゴンには包丁差しが付いています。他になべ類を収納するためにワゴンを2台作りました。

調味料などを置く棚は、流し台の奥ですが、車いすからも手が届くように低めに取り付けました。この棚の奥には蛍光灯が埋め込んであり、まぶしくなくかつ、手元が十分に明るいようにしてあります。

奥さんが病院から家に戻り、この台所で料理づくりが従来通りにできたとき、近くの商店街に買い物に出ていく気持ちにもなれたと聞きました。

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