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大瀧雅寛 ↘

スロープ - 玄関使わず居室から出入り

〈007〉

今回からは場所別に実例をあげて、考えていきたいとおもいます。東京都新宿区の60代のご夫婦の家を今春、リフォームさせてもらいました。夫がけいつい損傷による四肢マヒのため、車いすを使うようになったことによる改修です。ポイントになったのが出入り口です。

スロープ - 玄関使わず居室から出入り

庭を通るスロープで、居室に直接出入りしている - 第07回 - 2000年11月16日 朝日新聞(東京本社版)夕刊マリオンから

2000.11.16

というと、玄関を改修することがまず頭に浮かびますが、このお宅ではご夫婦が寝起きする奥の居室と、門を長いスロープで結ぶことにしました。玄関を使って車いすで出入りする、というのは案外難しいものです。

スロープを造らねばなりませんが、道路面から住宅の床面まで約70センチの差があるとして、楽に車いすを押してあがれるようにするには、約10メートルの長さが必要です。

よほどの広い家でなければ無理です。さらに、玄関に入るのと、玄関内の上がりかまちを上がるのとで、2段階の段差をなくさねばなりません。そこで、居室へ直接出入りすることを考えたわけです。

居室の窓は、床まである掃き出し窓でした。スロープの床と居室の床を平らにするため、木製の渡り板を窓の敷居の上に取り付けました。さらに、この家の奥さんは庭づくりが好きでしたので、スロープはその花壇や庭の池をゆっくりと眺められる場所に造りました。

もともと明るいご夫婦でしたが、このスロープを使って庭へ、そして外へ出ることで、より前向きになられた感じがします。夫は介護保険では要介護状態区分「5」の判定を受けていますが、このご夫婦の目標は「3」とより軽い判定を受けられるようにリハビリを進めることだそうです。

そして、スロープに設けた手すりを使って、立ち上がって庭を眺めることが夢。その話を聞いて私までなんだかうれしくなりました。住宅の出入りを考える時、「家に入る」ことだけではなく、「外に出る」という視点も大事に考えてほしいと思います。

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