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大瀧雅寛 ↘

マンション(5)- 段差解消は使用頻度に合わせて

〈029〉

車いす利用者が住むマンション改修の続きです。廊下に次いで工夫したのが水回りでした。トイレは車いす利用者が使うことを考えると、便器のわきに移乗やその介助のためのスペースが要ります。そのためには、トイレだけで2畳程度の広さは必要です。

マンション(5)- 段差解消は使用頻度に合わせて

2方向から入ることができるトイレを造った - 第29回 - 2001年05月02日 朝日新聞(東京本社版)夕刊マリオンから

2001.05.02

マンションのリフォームの場合、住宅全体の面積を増やすことはできません。そこで、トイレを広げる代わりに、トイレと洗面室をワンルームにして、便器わきのスペースを作る解決策をよく見かけます。しかし、この形式は日本人には「落ち着かない」とあまり歓迎されません。

そこで考えたのが2方向から入ることができるトイレでした。トイレと洗面所の間を折り畳み戸にしました。トイレには廊下から直接引き戸を開けて入ることもできますし、洗面室を通っても入れます。廊下から洗面室に入る戸は幅約90センチ、洗面室とトイレの間は戸を全開すれば1メートル以上ありますから、車いすでもゆったりと動けます。

難しかったのが段差の完全解消です。このマンションは、玄関の上がりかまちの段差は3センチ程度しかなく、好都合でした。が、その代わりに、廊下からトイレ・洗面室の段差が10センチ、さらに洗面室から浴室までの段差が10センチありました。

これは、コンクリートの構造床が平らに造られているためで、水回りすべてを廊下と平らにしようとしても、リフォームでは現実には無理です。

使用頻度に合わせて、段差の処理を考えました。入浴は1日せいぜい1度のこと。洗面は1日数回、トイレはもっと多いでしょう。ですから、廊下とトイレ・洗面室の段差を優先的になくすことに決めました。

洗面室から浴室までは16センチの段差が残りましたが、持ち運びのできるスロープを洗面室に置き、車いすでも対応できるようにしました。

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