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大瀧雅寛 ↘

介護保険1 - 急増した手すりの設置

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今春の介護保険のスタート以来、私どもの建築事務所への住宅改修の依頼がざっと5倍になりました。中でも多いのが、手すりを設置して欲しいという要望です。介護保険がカバーする住宅改修の費用は20万円が限度で、その9割の18万円が支給されます。

介護保険1 - 急増した手すりの設置

手すり一本が世界を広げてくれる - 第01回 - 2000年10月5日 朝日新聞(東京本社版)夕刊マリオンから

2000.10.05

手すりの設置工事は、特別なことがなければ1カ所が1−3万円ですから、保険を活用しやすいのでしょう。といって、手すりを介護保険を使える人専用と思ってもらっては困ります。介護が必要でない人にとっても、手すりは役立つものです。

ある80歳代前半のおばあさんは、階段に手すりをつけたことで昇り降りが楽になり、大好きな2階の和室をずっと使い続けています。

また、70歳代の夫婦のお宅では、ベランダへの出入り口に手すりをつけました。その一本で、庭へ出ることがおっくうでなくなり、閉じこもりがちだった人が外へ出るようになりました。

昨年、遅まきながらわが家のふろ場にも手すりをつけました。新商品の強度を試すためです。私の父(62歳)は最初「邪魔だ」といっていたのに、ふろおけの出入りには欠かさず使うようになりました。体に支障がない人にとっても、手すりは便利なものなのです。

ただし、私たち工事をする側にとっては、手すりはとても怖いものです。手すりには利用者の全体重がかかります。そこで折れたりはずれたりすれば、大事故につながります。

ですから、取り付け前にまず設置か所の構造や材質を調べます。強度不足の場合は、柱と柱の間に木を打ち付けるなどの補強を十分にしてから取り付けを始めます。私は事務所の中でも、最も信頼できる大工にしか、この手すり設置の工事は頼みません。

「バリアフリー」といわれる住宅の建築や改修を通して、だれにとっても、居心地がよく、安全な住まいづくりについて考えていきたいと思います。

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