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大瀧雅寛 ↘

台所(3)- 作業には狭い方がいい時も

〈017〉

築25年というマンションの改装を頼まれました。この時代のマンションの台所は、四畳半程度の広さのダイニングキッチン(DK)が多いようですが、この家もまさに縦横ともに2.7メートルほどのDKでした。

台所(3)- 作業には狭い方がいい時も

流し台から、あまり離れないように食器棚を設置した - 第17回 - 2001年02月08日 朝日新聞(東京本社版)夕刊マリオンから

2001.02.08

長さ2.1メートルの流し台がついていて、そのわきに冷蔵庫置き場があります。

残りのスペースに4人分のテーブルといすを置くとちょうどいいという想定だったのでしょうが、時代と共にそぐわなくなりました。

奥さんの要望は、DKすべてを使った広い台所にし、流し台は大きく、電子レンジや炊飯器の置き場もある作りつけの大きな食器棚が欲しい、というものでした。

流し台の反対側の壁に、食器棚を取り付け、そのわきに冷蔵庫を置けばいいように思えますが、それでは大きな欠陥が残ります。

流し台と食器棚・冷蔵庫の間にスペースが空きすぎるのです。この家の場合で1.5メートル以上の幅になります。

「そのぐらいはいいじゃないか」と思われる方も少なくないかもしれませんが、物を取り出すにしろしまうにしろ、いちいち一、二歩ですが歩かなくてはなりません。

毎日のことですから、これが案外、台所に立つ人にとっては負担になるのです。だいいちその面積が無駄です。

この家では、流し台と食器棚・冷蔵庫の間は、小柄な奥さんの体格に合わせて88センチとし、食器棚の裏に小さな納戸を設けました。

小さいといっても、一畳分ほどの広さはあります。そこの片面に天井までの棚を設け、入り口には引き戸を取り付けました。

奥さんからは使いやすく、疲れない台所との評価をいただきました。納戸は、ふだんは使わないなべ類や食器、すぐには使わない食品の置き場として活用してもらっています。

台所のように作業をする場所は、ただ広ければよいというものではありません。

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